研究開発

スターガルト病に対する取り組み~「エミクススタト塩酸塩」

スターガルト病の進行を抑えるために

網膜には脳に映像を認識させるために光を電気信号に変える働きをする「視覚サイクル」と呼ばれる仕組みがあります。この視覚サイクルは明るい光や強い光に曝露されると有害副産物を生成します。これが長期にわたり消化されないまま蓄積されると、視覚サイクルの働きに支障をきたすだけではなく、網膜が損傷され、視力低下あるいは失明に至ると考えられています。

エミクススタトは、この「視覚サイクル」に不可欠な酵素であるRPE65を抑制することで、視覚サイクル内のビタミンAの代謝率を低下させます。これにより、スターガルト病の発症に関与すると考えられているABCA4遺伝子の異常により蓄積されるビタミンA由来の有害代謝産物を軽減し、網膜の健康維持に有用であると理論づけられています。視覚サイクルを抑制する新薬候補としては世界初となります。

非臨床試験においては、有害代謝産物の蓄積、光障害による網膜変性、新生血管の増生を軽減することを実証しており、2017年1月から2017年12月まで米国でスターガルト病患者を対象に実施した臨床第2a相試験(※1)では、エミクススタトの作用メカニズムである視覚サイクルの抑制を網膜電図で確認したところ、用量依存的で最大90%を超える抑制効果が見られました。この結果を受け、臨床第3相試験を実施することといたしました。また、経口投与可能なスターガルト病の新規治療薬候補として FDA(米国食品医薬品局)からオーファンドラッグ認定を受けています。

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※1 多施設共同無作為化二重盲検試験で、スターガルト病患者に対するエミクススタトの薬理作用、安全性および忍容性を評価することを目的に、米国で実施しました。22名の 被験者を2.5mg、5mg、10mgに割り当て、1ヶ月間1日1回夕方にエミクススタトを経口投与いたしました。薬理作用は、網膜の機能を検査する網膜電図を用いて、網膜の中で光を感じる細胞のうち光感度の高い杆体細胞の働きの変化を検討しました。杆体の反応は、網膜電図ではb波で示されます。エミクススタトは視覚サイクルにおいて重要な役割を果たす酵素であるRPE65を阻害して杆体を休ませることで視覚サイクルを抑制する働きが確認されています。このことから、本試験では、スターガルト病患者に対して、杆体b波の振幅が投与1ヶ月後にどれくらいの割合で抑制されるかを主要評価項目に設定して実施いたしました。その結果、用量依存的で最大90%を超える抑制効果が見られたこと、および投与用量における安全性および忍容性が確認されたことを受け、主要評価項目は達成したと判断いたしました。