研究開発

網膜色素変性に対する遺伝子治療の取り組み

当社は、網膜色素変性に対して遺伝子治療の研究開発を実施しています。これは、光感度を持たなくなった細胞に再び光感度を持たせようというもので、細胞の電気信号を活用します。これまでにも眼科以外の領域において様々な研究が行われてきました。遺伝性網膜変性疾患に対する治療の可能性として、眼科でも研究が行われるようになったのはつい最近のことです。

当社が開発する遺伝子治療は、網膜のオン型双極細胞(※1)にヒトロドプシン(杆体細胞の視物質で光を受容するタンパク質)を形質導入するためにアデノ随伴ウイルスベクター(※2)を利用します。アデノ随伴ウイルスベクターは、いわゆる遺伝子の運び屋で、病原性を持たず安全であることが知られています。2018年からは、治療用ウイルスを運ぶ新規の組換えアデノ随伴ウイルスベクターの確立を目指し、ドイツのシリオン社と共同開発に取り組んでいます。

すでに非臨床試験では、失明していたマウスが、襲いかかるフクロウの映像に対して回避しようと行動的反応を示したことを確認しております。また、光感度の高いヒトロドプシンを用いることにより、他のタンパク質を用いる場合と比較して、光に対してより高い感度を獲得できることが期待されています。さらにヒト型タンパク質であるため、免疫の働きによる炎症反応がおきる可能性も最小限に抑えることができるものと考えております。

網膜色素変性の発症と進行に影響する原因として、100種類以上の遺伝子変異が同定されております (※3)が、当社が開発する遺伝子治療は遺伝子変異に依存しない治療法として有用性が期待されています。

※1 オン型双極細胞:双極細胞は視細胞(杆体細胞と錐体細胞)と神経節細胞を接合している網膜ニューロン。杆体細胞はオン型のみで錐体細胞はオン型とオフ型がある。

※2 ウイルスベクター:治療する細胞に治療遺伝子を導入するために利用されるウイルス。

※3 National Human Genome Research Institute. Leaning About Retinitis Pigmentosa. https://www.genome.gov/13514348. Retrieved Nov 7, 2016.