IR情報

CEOメッセージ

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株主・投資家の皆様へ

平素より格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。

当社は、創業当初から技術力の進展に事業成長の可能性を見出しながら、創薬支援、自社創薬、医療デバイス開発と、眼科医療ソリューションカンパニーとして、一歩一歩地盤を固めてまいりました。

とりわけ2017年は、基礎研究と開発パイプラインの進展に注力してまいりました。2018年はさらなる進捗と成果をご報告できる年になります。

エミクススタト塩酸塩について

2018年1月に、自社で開発した網膜疾患に対する経口投与可能な治療薬候補「エミクススタト塩酸塩」における二つの臨床試験の結果をご報告させていただきました。

一つは、糖尿病の三大合併症で失明の主要原因とされる糖尿病網膜症に対する臨床第2相試験です。本試験の対象は糖尿病網膜症の中でも重度の病態である増殖糖尿病網膜症という、網膜に病的な新生血管が生じ、血液成分が漏出して硝子体(水晶体の後ろにある透明なゼリー状の組織)に出血が広がったり、網膜剥離を引き起こしたりする恐れがある疾患です。

エミクススタトは、血管新生を抑制する働きが期待され、2016年4月から 2017年11月まで、増殖糖尿病網膜症の患者さんを対象とする臨床第2相試験を米国で実施しました。その結果、プラセボ投与群に比べ、エミクススタト投与群では糖尿病網膜症の発症や悪化に関連するバイオマーカーである VEGF(血管内皮増殖因子)濃度に軽度の改善が認められました。他のバイオマーカーには大きな変化は見られませんでしたが、血管新生に関係するバイオマーカーにこうした結果が得られたということは貴重なデータと考えられますので、引き続き社内で検討を進めてまいります。将来的に、これまでの外科的な治療法とは異なる、経口投与の治療薬として世の中に送り出せる日を目指しています。

もう一つは、現在有効な治療法が存在しない稀少疾病であるスターガルト病に対する臨床第2a相試験です。この疾患は、網膜にある遺伝子の突然変異による病気で、若年性黄斑変性とも呼ばれます。スターガルト病を発症すると徐々に視細胞が損傷され、視野の欠損、色覚異常、歪み、ぼやけ、中心部が見えにくいといった様々な症状が見られます。一般的に、小児期から青年期にかけて発症しますが、中には成人期まで視力低下を自覚しないこともあります。

この病気に対する治療薬候補としての可能性を調べるために、2017年1月から2017年12月まで米国でスターガルト病患者を対象に臨床第2a相試験を実施しました。その結果、エミクススタトの作用メカニズムである視覚サイクルの抑制を網膜電図で確認したところ、用量依存的で最大90%を超える抑制効果が認められました。同時に投与用量における安全性および忍容性が確認されたことを受け、主要評価項目は達成されたと判断し、2018年中に本剤の有効性を検証するための臨床第3相試験を実施する計画です。また、エミクススタトは2017年1月にスターガルト病の新規治療薬候補として米国食品医薬品局(FDA)からオーファンドラッグ認定を受けています。

さて、エミクススタトのほか、現在、社内研究をしております開発品につきましても、進捗をご報告いたします。

ラノステロール類縁低分子化合物について

白内障の治療薬候補として、水晶体を構成するタンパク質の凝集を阻害し、水晶体混濁を解消するラノステロール類縁低分子化合物の開発を進めております。現在、臨床試験に必要なIND申請(臨床試験実施申請)に向けた製剤開発のための非臨床試験を行っております。

病気の進行抑制および水晶体混濁を解消できる根本的な治療法になることを期待しています。まず軽度の白内障の治療薬として開発し、将来的には老視や病期が進んだ白内障への適応を視野に入れております。

網膜色素変性に対する遺伝子治療について

次に、当社では、網膜色素変性等の網膜疾患によって失明した患者さんに対する遺伝子治療の開発も進めております。これは、光感度を持たない細胞に光感受性の高いタンパク質を導入することによって光感度を持たせる方法で、細胞の電気信号を活用します。

非臨床試験では、失明していたマウスにこの治療を施行したところ、襲いかかるフクロウの映像に対して回避しようとする反応を示したことを確認しました。網膜色素変性の発症と進行に影響する原因として100種類以上の遺伝子変異が報告されていますが、当社は、遺伝子変異に依存しない治療法の開発を目指しています。遺伝子治療には、病原性を持たず安全にウイルスを運搬するアデノ随伴ウイルスベクターを用いますが、この技術においては2018年からドイツのシリオン社と共同開発しています。

生体内物質を模倣する低分子化合物について

さらに、現在、生体内物質を模倣する低分子化合物の研究開発に取り組んでおります。糖尿病黄斑浮腫、ウェット型加齢黄斑変性など、血管新生を伴う網膜疾患の初期段階におこる炎症を抑える治療法の確立を目的としております。非臨床試験では、網膜の細小血管を損傷することなく病的な血管新生および血液成分の漏出を抑える働きにおいて、既存の抗VEGF療法と同等の効果が得られる可能性が示唆されました。当社としましては、この低分子化合物が標準治療で投与される抗VEGF製剤よりも投与回数を減らせる可能性があるものと考え、引き続き研究を続けてまいります。

在宅・遠隔医療を見据えた眼科医療デバイスについて

現在当社では、眼科における治療薬のみならず、医療デバイスの開発にも力を入れています。PBOS(Patient Based Ophthalmology Suite)と呼び、眼科医療の現場で網膜の状態の検査に用いられるOCT(光干渉断層計)の超小型モデルを開発しています。高齢化が進み、同時にインターネットの普及に伴って在宅や遠隔医療分野が充実することが見込まれます。眼科に対してもその需要は高まるものと考えられますので、当社ではウェット型加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫等の血管新生を伴う網膜疾患を対象に、患者さんが自宅で網膜の状態を測定する検査デバイスとしてPBOSを開発しています。インターネットを介して、網膜の構造や視力の変化といった病状の経過を、医師が遠隔で診断できるシステムを確立することにより、個々の患者さんに最適な眼科治療を実現し、目の健康維持を目指そうというものです。特に重度の網膜疾患の患者さんの多くは、一定の間隔で目に注射をして薬剤を投与することが必要であるため、治療のタイミングが非常に重要です。「もう少し早く来院していれば、悪化を抑えることができたのに」といったことのないよう、日々、網膜の状態をモニターできる仕組みを提供したいと考えており、2018年3月に臨床試験を開始いたしました。

以上が開発に関する進捗でございます。医薬品や医療デバイスの開発は臨床データを取りながら進めていくため、ご報告までに時間をいただくこともございますが、1日でも早く良い知らせをお届けできるよう、社員一丸となり、事業に邁進する所存でございます。

今後とも、ご指導ご鞭撻のほど、宜しくお願い申し上げます。

2018年3月吉日
窪田製薬ホールディングス株式会社
代表執行役会長、社長兼最高経営責任者
窪田 良 MD, PhD