目の病気

増殖糖尿病網膜症・糖尿病黄斑浮腫

糖尿病の三大合併症

糖尿病は、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの分泌やその働きが慢性的に低下することにより発症し、世界で約4億1,500万人が患っていると推定されます(※1)。その3割が合併症として糖尿病網膜症を引き起こすことが報告されています(※2)。糖尿病網膜症は成人が失明する主な原因のひとつであり、視野の中心部が黒ずんだり、ぼやけたりする視野障害や視力低下が特徴です。進行性疾患であり、比較的軽症の段階である非増殖糖尿病網膜症と、より重度な増殖糖尿病網膜症があり、このどちらの段階でも糖尿病黄斑浮腫を発症する恐れがあります。

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病気のメカニズム

高血糖が慢性化すると血流が滞り、網膜が低酸素状態になります。すると網膜には酸素不足を補うための新生血管が生じるのですが、新たに生じた血管は脆くて病的な血管であるため血液成分が漏れ出して硝子体(水晶体の後ろにある透明なゼリー状の組織)に出血が広がったり、網膜剥離を引き起こしたりする恐れがあります。糖尿病網膜症は、このような網膜内で発生する血管障害に起因する進行性の疾患で、糖尿病の合併症として発症します。糖尿病網膜症の合併症である糖尿病黄斑浮腫を発症すると、網膜の中心部にある黄斑が腫れ、視力障害を惹き起こします。

負担の軽い治療へ

糖尿病網膜症は、糖尿病を長く患っていたり高血糖および高血圧の状態が長く続いていたりなどが原因で起こります。糖尿病では1型、2型のどちらであっても、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫を発症するリスクがあり、糖尿病歴が長いほどその確率は高くなります。米国眼科学会では、1型糖尿病を15年程患っている約80%の患者が糖尿病網膜症を発症していると推定しています。病気の進行を抑制する治療法はありますが手術や眼球への注射が必要であり、身体的負担のかからない治療法の確立が求められています。

※1 国際糖尿病連合(IDF) 「糖尿病アトラス 第 7 版 2015」

※2 Market Scope, The Global Retinal Pharmaceuticals & Biologic Market, 2015.